みみずく洋菓子店の店内からは、なだらかに連なる山々の姿を望むことができます。
今は全体が優しい新緑のグラデーションに包まれる季節。
そんな時期にぴったりな若草色のエッセイ集『街と山のあいだ』(2017年KTC中央出版)を手に取りました。
著者の若菜晃子さんは、出版社で図鑑や登山雑誌の編集者として活躍した経験をお持ちなのだそう。岩陰にひっそりと咲く高山の花や小鳥のさえずり、人と交わした何気ないけれども忘れ難い言葉など、山にまつわる思い出がとても静かな筆致で綴られています。淡々とした端正な文章が読んでいて心地よく、しんとした山のひとときを一緒に味わっているよう。ところどころにスケッチも添えられていて、清々しい景色がありありと思い浮かびます。
普段は街中で忙しく暮らしている方にこそ、一度手に取っていただきたい一冊です。