ずいぶん長いこと海外旅行ができていないので、最近は読書を通じて異国情緒を楽しんでいます。最近のお気に入りは、米原万里の『旅行者の朝食』(2004年 文春文庫)。子ども時代にプラハのソビエト学校で学び、長じてからはロシア語通訳者として活躍した著者の、食にまつわるエッセイ集です。
言語はもちろん、歴史や文学など、幅広い分野のうんちくを縦横無尽に披露する著者の教養には驚くばかり。でも語り口は軽妙で、親しみを感じながら楽しく読めます。ロシア人が「旅行者の朝食」という言葉で大笑いする理由や、「嚙み砕くほどにいろいろなナッツや蜜や神秘的な香辛料の味がわき出てきて混じり合う」という幻の極上スイーツ・ハルヴァの話、変化に富むドイツ菓子でつくられた『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の家のことなど。ユニークかつ食欲をそそるエピソードが目白押しです。
一風変わった食事の経験談もおもしろく、ついつい読み耽ってしまう毎日。この本に刺激を受けて、新しいスイーツのアイデアも生まれそうです。